前回、武蔵浦和の義務教育学校について、私が大切にしたいのは、
「子どもたちに、どんな学びの環境を残すのか。」
という視点だと書きました。
今回は、3回の入札不調について、公共事業に携わってきた人間としての私見を書きます。
私はこれまで、学校、給食センター、廃棄物処理施設、公有地活用、下水道施設、公園など、さまざまな公共事業について、公募資料や事業者向け資料の作成、予定価格の検討、事業者との調整などに携わってきました。
また、大規模な公共事業の受注者となる大手ゼネコンとも、幾度となく調整を進めてきました。
そうした経験から率直に申し上げると、
「3回も入札不調が続いているのであれば、単にタイミングや市場環境の問題として片付けるのではなく、そもそもの発注条件や事業スキームに、事業者が参画しづらい要因があるのではないか」
と考えます。
もちろん、現在の公共事業を取り巻く環境が厳しいことは事実です。
資材価格、人件費、労務不足など、公共工事を取り巻く環境は大きく変化しています。
1回、2回程度の不調であれば、このような環境では起こり得ることだと思います。
しかし、それだけを理由にするのであれば、同じような不調が今後も繰り返される可能性があります。
だからこそ、3回の不調を「今回はたまたま成立しなかった」と捉えるのではなく、
「なぜ事業者が手を挙げられないのか」
「発注条件のどこに課題があるのか」
を検証する必要があると思います。
事業を進める側(さいたま市の担当者)からすれば、事業者が「この条件なら受注できる」と判断できる発注条件を整えることが重要です。
さらに言えば、1社だけが何とか受注できる条件ではなく、複数の事業者が「この条件なら参画できる」と判断して手を挙げられる環境をつくり、その中で適切な価格競争が図られることが、公共事業においては非常に重要だと思います。
公共工事は、今の時代、決して事業者にとって取り組みやすい仕事ではありません。
特に公共施設は、民間施設とは異なる要求水準があり、耐震性能などへの対応によってコストが膨らむこともあります。
さらに、完成検査などの行政上の手続きもあり、民間工事とは異なる事務負担やリスクがあります。
もちろん、適正な利益を確保できる事業であれば、事業者は参画します。
しかし、リスクに対して利益が見合わない事業であれば、無理に受注することはありません。
同じ100億円規模の工事であっても、民間工事と公共工事では、事業者から見た採算性やリスクは異なります。
そして、今回さらに気になるのが「工期」です。
実施設計の段階では、当初想定していた工期よりも、実際の施工期間が延びる可能性があります。
ゼネコンの立場からすれば、工期が読めないということは、それだけ大きなリスクになります。
大規模工事になれば、必要となるサブコンや技術者、作業員などの確保も必要です。
「この時期に、この規模の工事を、この体制で完成させる」
という見通しを立てられなければ、受注を判断すること自体が難しくなります。
3回目の入札では、見積活用方式、VE提案、積算数量書活用方式など、さまざまな対応が示されています。
もちろん、それぞれ意味のある対応だと思います。
ただ、公共事業の実務に携わってきた私からすると、
「本当にそこだけの問題なのだろうか」という疑問もあります。
今の状況で、これだけ大規模な工事の積算をすること自体が非常に難しい。
資材価格も、人件費も、工事会社の受注状況も変化しています。
さらに、受注したとしても、必要な時期にサブコンや現場の人員を確保できる保証がありません。
事業者からすれば、それだけ大きなリスクを背負うことになります。
では、どうすればいいのか。
正直、私自身も現時点で「これが答えだ」と言えるわけではありません。
だからこそ、ここで一度立ち止まって、
「そもそも、何のためにこの事業を実施するのか。」
「この事業によって、子どもたちにどんな教育環境を実現したいのか。」
「その目的を実現するために、本当に今の事業スキームが最適なのか。」
「実施するとしたら、どうすれば事業者が参画できる事業になるのか。」
というところから、改めて考える必要があるのではないでしょうか。
3回不調になったからといって、単純に「もう一度入札する」というだけでは、同じことが繰り返される可能性があります。
このまま事業の前提や発注条件を十分に検証しないまま進めれば、4回目の入札不調につながる可能性もあります。
もちろん、私は義務教育学校そのものに反対しているわけではありません。
むしろ、子どもたちにとってより良い教育環境をつくることには、大きな意味があると思っています。
だからこそ、
「つくるか、つくらないか」だけではなく、「何のためにつくるのか」
「本当に必要な機能は何なのか」
「どうすれば持続可能な事業として実現できるのか」
まで考えることが大切だと思います。
公共事業は、「予算をつけて、発注すれば終わり」ではありません。
行政、設計者、施工者、地域、そしてそこで暮らす子どもたち。
それぞれの立場から、どうすれば事業を実現できるのかを考える必要があります。
私自身、公共事業の実務に携わってきた経験があるからこそ、今回の3回の入札不調を単なる「入札の問題」として終わらせず、事業そのもののあり方を考えるきっかけにしてほしいと思っています。
【★皆さんのお考えを教えてください】
ちなみに、この武蔵浦和の義務教育学校については、計画に至った背景も含め、さまざまなご意見や考え方があることも承知しています。
私自身もまだ調べている途中ですので、今回の投稿をご覧になった方から、さまざまなご意見や情報をいただけましたら幸いです。